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デンマークの様な社会福祉国家・環境先進国を目指すには、何が必要なのか「ユニオン」と「労働ニュース」アーカイブ

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デンマークの様な社会福祉国家・環境先進国を目指すには、何が必要なのか

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デンマークの様な社会福祉国家・環境先進国を目指すには、何が必要なのか
【社会全般に対する考察 オンリーワン見聞録  2008/05/25】

●昨日24日の日経朝刊に、気になるコラムが有った。 マーケット総合ページの定番コラム「大機小機」の記事である。 見出しは「孫のため、と訴えよう」である。

「後期高齢医療制度の評判がこんなに悪くなるなんて、この制度の設計者たちは予想もしていなかっただろう」と言う書き出しで始まって、最後は「今からでも遅くない。 福田康夫首相は『高齢者の皆さん、孫のため、まずかんがえましょう』と。」で締めくくっているのである。

賢明な諸氏には、これだけで、このコラム氏の云わんとする事はおわかり頂けるであろう。 概ね、マスコミの主張もこれに沿ったものが多い様である。

戦後も63年近くに及ぶ。 当時12歳以上の人がちょうどこの後期高齢医療制度にかかる。 多くの働き手を戦争で失い、否が応でも戦後の復興を担ってきた人々が、焼け跡の貧しい日々を乗り越えて日本の高度成長に大きく貢献されて来たのはいうまでもない。 こちらもそのおかげで、次世代に引き継ぐ年代にまで無事生きてこられたのである。 今、現役の世代には、因果は巡るというべきか、陰に陽に日本の後見役とも言えるアメリカの格差社会の文化を受け入れた事で、戦後とは異なるプアーな人々が大勢を占める新たな社会問題も抱えている。 だからと言って、「高齢者の皆さん、孫のため、まずかんがえましょう」なんて、その人達におもねた考えは如何なものか。

「若い年代が、年寄りの面倒を見るのは、問題だ」と言うがごとき、下世話な発想自体、嘆かわしい。 世代の交代を是とし、その負の部分は、国家と国民全体で負担し合える国、国民と国家が信頼しあう「国のかたち」をつくるのが「政治の責任」「行政の役割」だと考えるのだが・・。

尤もこのコラム氏は「消費税を財源にすれば」という事に触れてはいるが、暗に「有権者の大半は高齢者なので、高齢者に負担を求める制度は、不利である」と半ばこの制度を、擁護している。 医療、食糧、環境問題から教育まで及ぶ、今の政官財の「リセット」こそが、子や孫のためになるではないだろうか。

今週は、ケンジ・ステファン・スズキ氏の著作「なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか」を取り上げた。 「スカンジナビアモデルなる国のかたち」の一端に迫ってみたが、著者が指摘する「国の歴史」による影響が大きい様である。 しかし「デンマーク」に見る「高福祉国家」のあり様は、決して遠い国、小さい国の事だとは言えないのではないだろうか。

●今日の引用資料


ケンジ・ステファン・スズキ:著なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのかどうして、日本では人が大切

■202−理想の国家 スカンジナビアモデルのデンマーク

▼202−3 デンマークの様な社会福祉国家・環境先進国を目指すには、何が必要なのか(FIN)


◇高福祉でも国家財政は黒字のデンマーク◇
デンマークの2006年における国民総生産(GNP)は、約41兆円、1人あたりでは約約750万円。 国債額の残高は2006年12月末、約8兆2000億円で、対GNP比で約20%である。 又、2006年の歳入額は約20兆円で、歳出額は約17.7兆円で、約2兆4500億円の黒字経営をしている。

この黒字分を国債の返済に充てておりデンマーク政府は、次世代に借金のない国を引き渡そうとしているにである。 高齢者福祉にも力を入れており、高齢者に対する施策の負担額は、対国民総生産では世界のトップである。

風力発電やバイオガスプラントヘの導入策が実現し、投資した市民や農家がその利益を得て、その一部が租税となって国家財政を潤し、国が買電する事でエネルギー自給率が上がり、それによって二酸化炭素の排出が削減される。 いわば一石何鳥もの有効なシステムが実現しているデンマーク。 なぜデンマークでは教育費や医療費、高齢者福祉などが国民相互で支え合う「スカンジナビアモデル」とよばれている社会福祉ができたのか。 この様な「誰も損をしない」合理的な制度をつくり上げたデンマークの国民は、どの様な歴史的過程を経て生まれてきたのだろうか。

◇デンマーク5000年の歴史を学んで理解した事◇
1)デンマーク人は、建国以来ヨーロッパ全体を市場として生きて来た国民である事。
2)その歴史的過程が、今日の世界を相手に事業をする企業や個人事業家にまで継承されている事。
3)権限を持つものが弱者を庇護し、弱者同士が互いを守り合う「共生の国民性」は、「デンマーク王国」を建国する過程で費やされた大きな犠牲が生み出したものである事。

国民各層が大きな犠牲を払って国を守ってきた事が「国を愛する国民性」となり、国家を守る事とは何か、を認識する国民を育成してきたと考えるのである。 「ゆりかごから墓場まで」国民同士で守りあう、社会福祉制度の導入につながり、今日の自然エネルギーの導入にもつながっているのではないだろうか。

デンマークの教育で重視されている科目は歴史である。 歴史教育の中から国の生い立ちを知ることによって、現在に至る国家育成の過程を知り、その過程の中から国家を受け継ぐ次世代として何をしなければならないかを考えさせているのである。

社会福祉国家を目指す人びと、自然エネルギー導入を目指す人々にとっても大事な事は、自国の形成過程を知る事である。 国家の形成過程の中から、その国に住む国民が「共生社会」を選ぶか、それとも「競争社会」を選ぶかの結果が出てくる。 ただし「競争社会」の中からは、社会福祉国家や自然エネルギー導入国は生まれない事は確かである。

◇日本でも、「国民の福祉」は ごく基本的な願い◇
21世紀に入った現在も、日本人が封建制度の中で作り上げた階級社会を改めようとはしない姿勢は、日本人が選んだ選択の結果である。 日本国憲法の前文には、次の様な理念が掲げられている。 「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」と。

つまり、国民が選んだ代表者が国民への福利を無視し、自己の利益に走る行為は許されていない。 日本国憲法にある「国民の代表者が国民の福利のために権力を行使する」ことを国民が再確認し、政治に携わる者に要求して、国政の改革に当たらせるなら、多くの改善がなされるだろう。

その為には、何をもって「国民の福利」とするかについて、国民的合意形成が必要である。 一般の国民が求める福利とは、衣食住を得る為に必要なお金を自己の労務によって賄え、教育や医療費負担の心配がなく、働けなくなった場合でも、生活の保障が得られる体制である。

そしてこの福祉の基盤には、生きるために最低必要な「水と酸素と食料とエネルギー」がなければならない。 つまり、国政に当たる人の最も基本的な役割は、「水と大気を汚染から守り、食料とエネルギーを確保する」という事である。 だが、国政の現状を見ると、水は汚染され、食料自給率は39%、エネルギー自給率も約16%と低い。 このエネルギー自給率16%も原発を除くと約5%という低さである。

この様な不幸な状況が生まれているのは、国政に携わる人も含め、国民の多数が国を変革していく事への関心を失っているからではないか。 その背景には、デンマークと違って日本の学校教育は大学入試の為にあり、国政に関われるような教育をしていない事がある。

◇日本の現状を変えていく、いくつかの提案◇
日本が様々な意味での借金状態から抜け出すためには、国民全体の国政への関心を高めることから始める必要がある。 国政の課題としては、次の様なものがある。 但し、いずれも数10年の時間を要するだろう。

1)小学校から日本史や世界史の不偏的な歴史教育の強化を回り、中学・高校では特に近代史の歴史教育に力を入れる。 高校大学では、特に近代の歴史教育に重点をおき、更に「国家経済学」を必須課目に加える。
2)政治家の選挙運動は高校や大学でも行い、政党代表による政策討論会を行う。 討論のテーマは、国の現状を踏まえた改善策に重点を置く。
3)教科書検定制度を廃止して、教育現場に創造的な教育を行う自由を実現する。
4)地方分権制度を強化して「州」政権を確立し、国防と外交以外は、州政権に全て委譲する。
5)電力・ガス事業などのエネルギー関連の供給会社を州政権が管理運営する公共事業とする一方で、市民が発電事業に参入できる仕組みを作る。
6)公務員の専門職化を図り、現在3年前後で行われている人事異動制度は廃止する。
7)資産税の導入や所得税の見直しなど、歳入の改善を回る。

日本人の多くは、現状を変える為の活動により、政治情勢が不安定になる事を恐れているのではないか。 しかし、現実には「国の借金生活」から生み出される国民の生活不安が、強盗、詐欺、殺人、人心の荒廃による軽犯罪の激発、大人や子供の世界を問わず蔓延するイジメ、市民の自殺という結果を生んでいる様な社会のあり方を、もっと注視し、ていかなければならない。

◇社会福祉国家・環境先進国を目指す上において、何が必要なのか◇
では、デンマークの様な社会福祉国家・環境先進国を目指す上において、何か必要なのか? カギは、国と国民の信頼関係にある。 まず、国の運営管理に携わる人たちの間で「国を愛する精神」と「公正な精神」が共有される事が不可欠である。 また、国民の側にも、国を愛する事や、相互の信頼精神が必要になる。 税金によって家族や自分のために手厚い政策が実現されるという国家運営に対する信頼感が、働く活力になり、それが経済成長につながっていく。

だが日本の場合、封建制度の中で育まれたと思われる国益を考えない自己中心の国民性が、社会福祉国家を目指す上で大きな障害となっている。 その最たるものが、権力者が引き起こす数多くの汚職事件や談合事件である。

談合や汚職事件は、国民の「行政や企業に対する信頼関係」を歪め、納税する意欲を減退させる。 税金が一部の役人や団体の私腹を肥やすために使われているとなれば、納税精神を削ぐのは当然である。 日本で脱税する個人や企業が後を絶たないのは、国や行政、官僚への信頼感が欠如しているからである。 それが一方で、日本の財政赤字を生み、不足分を国債で賄うという悪循環の原因になっているとすれば、官僚の汚職は国家財政の食い潰しにつながっている事になる。

国家を管理運営する人達に「あるべき国家の理念」がない事。 それが、こんな社会を作った原因である。 国家を自己の利益のために利用して憚らない政治家、官僚を許容している社会状況の中では、社会福祉国家の建設は難しい。

ケンジ・ステファン・スズキ(ケンジステファンスズキ)
旧姓、鈴木健司。 S.R.A.デンマーク、「風のがっこう」代表。 1944年、岩手県生まれ。 1967年、青山学院大学中退後デンマークに渡り翌年コペンハーゲン大学政治経済学部に入学。 1971年から在デンマーク日本大使館に勤務し、その後農場経営をはじめる。 1979年デンマーク国籍を取得。1990年中部ユトランド商科大学会計学部税法学科を卒業。同年、S.R.A.デンマークを設立。 デンマークの風力発電機、バイオマスプラントを日本に普及させる事業を手掛ける。 1997年デンマーク・ウアンホイに「風のがっこう」を設立。 環境政策などの視察でデンマークに訪れる日本人のための研修施設として運営を開始。 2002年、京都府弥栄町に「風のがっこう京都」を町営の環境教育施設として開校。 2004年「風のがっこう栃木」と業務提携し、研修業務を支援。 現在は、日本とデンマークを往復しながら様々な事業を手掛けるほか、講演活動などを精力的におこなっている。 著書に『増補版 デンマークという国 自然エネルギー先進国「風のがっこう」からのレポート』(合同出版)。

テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース

  1. 2009/01/03(土) 00:00:44|
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