http://moneyzine.jp/article/detail/118276 「株価のために人を切り捨てる企業」 逃げ場のない永遠なる搾取社会の到来
【MONEYzine 2009/01/03】
富裕層と下流の二大格差時代がやってきた。どんなに努力しても、いくらもがいても、決して生まれ変われることない強者と弱者。すべてを搾取して、人間を貪る強者たちの宴が始まった!(バックナンバーはこちら)
派遣社員からホームレスへの一本道
自動車産業を初めとする製造業で、期間従業員や派遣社員の首切りが横行している。トヨタの系列6社で1万460人、日産は1500人、マツダが1300人、スズキが600人、日野自動車が500人といった状況だ。中でもいすゞ自動車は、1400人いる期間労働者と派遣社員を全員、2008年末までに契約を打ち切ると発表している。
期間労働者や派遣社員は、会社の寮に住み込みで働いているので、契約打ち切りはすなわち住宅を追い出されるということを意味する。さすがに世間からの反発の声が強かったので、住宅については、年度末の3月までの滞在を認めたようだが、以前として状態は厳しいままだ。
彼らは不況で仕事のない地方から、人材派遣会社の求人募集に申し込んで、大手企業の工場に住み込みで派遣されてくる。
最初の求人情報では、「月収32万円」「27万円」とか高い給与に惹かれて応募するが、実際の月収は、事前には無料だったはずの寮費や光熱費、家電のレンタル代などを引かれて、10万円あまりになってしまう。これでは貯金などをする余裕もなく、いったん契約を打ち切られると、田舎に帰る旅費もないままにほっぽり出されて、もはやホームレスへの一本道しかいない状況に追いやられるのだ。
以前は、失業者からホームレスへの間には、いろいろなセーフティネットがあったが、現在ではまったく機能していないといってよい。健康保険などの各種の減免措置や生活保護も受けることが、非常に困難になっている。
ましてや、新規の職を探そうにも住民票がなければ、正社員にはなれない。行き着くところ、その日暮らしの派遣社員として搾取されるしかない立場になってしまうのだ。また住民票を取るために、新しく部屋を借りようとしても、保証人がいなければそれもかなわない。
ということは、いったん首切りで住居を追い出されると、もはや這い上がる可能性はまったくないといってよいだろう。
また、いったん就職が決まった新卒の学生に対しても、内定取り消しなどでかなり厳しいしわ寄せが来ている。不動産や金融関係では、9月のリーマンショックによる業績の急降下によって、新卒の内定を取り消している企業が増えている。内定取り消しによる不評よりも、目先の経費を控えたいというところだろうか。運よく入社を認められたとしても、正社員ではなくパート社員として契約されたり、試用期間が1年間にも及んだり、至るところに落とし穴があるようだ。
急速にスラム化する新宿の繁華街
このように、小泉内閣以来の規制緩和路線によって、派遣労働の原則自由化が認められて以来、格差はひらくばかりだ。新宿のある一角では、低料金で泊まれるネットカフェや安いファーストフード、コインロッカーが林立して、ワーキングプアたちの棲息地となっている。
いったんこのように、「下」の人が集まり始めると、誰にも止めることはできない。「下」を商売にした店舗も集まり、ここ数年で、目に見えて繁華街はスラム化してきている。おそらくあと1〜2年で、都市も「上」「下」の棲み分けが顕著になり、地価にも大きな格差ができて、固定されていくことになるだろう。
これまで東京では山谷、大阪では釜ヶ崎、横浜では寿町など、数百メートル四方の一定の地域が、日雇い労働者の街として有名だったが、近い将来新宿区全体がスラム化することにもなりかねない。それほど、事態は深刻になっているということだ。
では、首を切る側、つまり企業の経営は「リストラをしなければやっていけない」ほど、本当に行き詰まっているのだろうか?
ある調査によると、世界のトヨタの系列会社で1万人以上の人員削減策を打ち出しているにもかかわらず、今期の経常利益の見通しは9000億円もあり、株主への配当はここ8年で5倍にも膨らんでいる。
そのうえ企業の預金といわれる内部留保も17・4兆円とケタ外れに大きくなっている。この数字を見ると、リストラをするどころかますます儲かって、株主へ利益を還元している状況にある。それをなぜ今リストラを断行しようとするのか?
答えは1つ。株価の安定を図るためだ。国際市場の垣根がなくなった現在、あらゆる手段を使って株価を上昇させることが企業の命題になってきている。したがって、リーマンショックによる世界的な経済危機の中で、何も対抗策を講じないと、それだけで株価が暴落してしまう危機にあるのだ。
だからこそある程度利益が上がっていても、リストラ策を発表して、市場に好印象を与えようとしている。かつて家族的経営を誇った日本企業も、従業員より株主がいちばんの時代になったわけである。現在の日本市場では、外国人の株主が半数以上で、それもファンドや法人などが大株主になっている。今後景気が回復基調になったとしても、株主重視・従業員軽視の政策は不変である。
子息の教育に400万円かける富裕層
つまり、これから先も、下流は下流を再生産して身分として固定されていくのだ。一昔前なら、貧乏でも努力して優秀な大学を卒業すれば出世する道もあったが、教育格差時代の現在ではそれも不可能に近い。
いまや公共教育では、まともに読み書きや計算もできない若者が増えている状況で、それ相応の学力を身につけるなら、予備校や塾、家庭教師などプラスアルファの教育を受けなければならない。
例えば、誰でも知っていて「エスタブリッシュ小学校」いわれる慶応幼稚舎に合格するには、塾や家庭教師、お絵かき教室などで、最低でも年間400万円くらいの教育費がかかるといわれている。この学校は、セレブの子弟が通い、ここで培われた人間関係は大学を卒業して、実社会に出た後も、あらゆる面で発揮されて、結束力の固さも類を見ない。
だからこそ、どんなに難関であろうと入学させたいと考えるのだろう。知能テストなどのペーパーテストは行われず、グループ内での行動観察やお絵かき、工作、体操能力などで合否が決定するが、20倍以上の狭き門となっている。
合格率が高いとされる有名幼稚園やお受験のためのお教室に通わせるために、わざわざ引っ越したり、高級マンションを借りたりすることも、いまや常識のようだ。
また、慶應義塾の意思決定機関である「慶應義塾評議員会」の委員の推薦状が合格の最低条件であり、実際には慶応幼稚舎出身者の推薦状しか効力がないなど、まことしやかに囁かれている。だからその推薦状を得るために両親は涙ぐましい努力をする。次にその一例を紹介しよう。
ある父親は、評議員とのコネを作るために、子どもが1歳の時から、都内の豪華なフレンチレストランや高級会席料理店で会食を重ねている。そこで知り合った紹介者から紹介者へとたずね歩き、すでに500万円以上使ったが、まだ有力なコネクションには辿り着いていないという。
こんな芸当は、1日数百円で暮らす下流にはできないどころか、想像にも及ばないだろう。ただでさえ、小学校から大学まですべて公立で学んでも1300万円以上の教育費がかかる現在、年収300万円前後のワーキングプアにはもちろん、年収400万円の正社員でも、子息に高等教育を受けさせることなど不可能になっている。
もはや教育の機会均等は崩壊して、親の格差によって、子どもの人生も決まってしまっているのだ。
ある市の調査によると、その市の生活保護受給者の4分の1が、その親世代も生活保護を受けていたことがわかった。また、母子家庭の4割も、同じく親世代が生活保護を受けていた。
まさに「蛙の子は蛙」、「下流の子は下流」ということで、貧困の連鎖による格差固定が現実になっている。
支援策の資金が民間企業への人件費としてバラまかれた
本来なら社会には、弱者を守ったり救済したりするための数々のセーフティネットであったはずである。これまでは、その役割を日本政府や労働組合が行ってきたが、現在では機能不全に陥っている。
いまや労働組合の組織率は全就労者数の18%でしかなく衰退の一途を辿っているが、日本の組合が産業別組合という形態なので、正社員しか労働組合として組織化されておらず、経営側に対して派遣や日雇いなどの非正規社員はまったくの無力なのだ。
それどころか正規社員は自分たちの雇用が危なくなるということを考えれば、非正規社員と連帯することなど考えにも及ばないだろう。最近やっと非正規雇用社員のための組合ができて、参加する人も増えているようだが、まだまだ力不足は否めない。
一方、セーフティネットに責任を持たなければならない政府当局は、政策が後手後手に回り、有効な対策がたてられていない。安倍前内閣の目玉政策であった「再チャレンジ支援策」は、2006年に打ち出されたが、ばらまきと人件費に消えてしまった。
ニートやフリーター向けにカウンセリングや就職指導をおこなうジョブカフェを全国に設けたが、委託先であるリクルートや富士通などの民間企業に法外な人件費を吹っかけられて頓挫した。なんと民間委託先の人件費として、1日12万円も計上されていたのだ。
ニートやフリーターが日雇いや派遣で稼ぐ日当は、5000円から7000円だから、およそ20倍以上の人件費を支払っていたわけだ。これによって、20億円がリクルートに人件費として消えたのだ。
企業は派遣や日雇いを雇用の安全弁として利用しながら、一方で貧困ビジネスの対象としても、そこから利益を得ている。まさに二重に貪る、ダブル搾取ともいうべき構造なのだ。
政府としては、政策を細部までしっかり精査してチェックする能力が欠けていたというべきで、いくらよい政策を打ち出しても、画餅では費用を使うばかりで実行しない方がましだろう。
「高級官僚になるのはバカ、目指すは国連職員」
最近よく、政府の政策実行部隊である官僚の能力が欠如しているといわれている。なぜだろうか?
一昔前なら、日本の最高学府である東大を卒業して高級官僚になるのが、1つのステイタスだったが、いまや東大生の希望進路は、外資系の金融機関やコンサルティングファームになってしまった。
「官僚になって日本のためになろうなんて思いません。グローバル化の時代にそんなことをいっていたら、バカを見るだけ。ボクは外資系の金融機関かコンサルティング会社に就職します。そこで、将来のコネクション作りをするのです」(東大法学部3年・I君)
いまや「高級官僚」という単語すら、東大生の間では死語になりつつある。低賃金で早朝から夜遅くまで働かされて、何か問題を起こすと真っ先に矢面に立たされる。最高学府を出てまで、こんな報われない職業に就くヤツはよほどのバカだと思われている。
高給取りの象徴「国連職員」をめざす若者
もはや官僚は、東大生でも外資系のファンドやコンサルティングファームにいけない出来の悪い学生が、仕方なく就職する職業に成り下がってしまったのだ。したがって、明らかに官僚の能力と質が低下していることは否めない。
I君は続けていった。
「グローバル化が進んで格差が広がったというけれど、たかだか日本国内の話でしょう。中国やインドは豊かになって、国と国の差はむしろ縮まった。日本で貧乏といっても大した話ではない。グローバル化は十分機能して、世界的にも大きな利益をもたらしているんですよ」
ちなみに彼の父親は高級官僚で裕福な家庭に育ち、赴任先のインドでは執事や家政婦つきの生活も体験している。おそらくI君も同等の家柄の彼女と結婚して、「豊かさ」を相続していくのだろう。
最後に、I君に将来像を聞いてみた。
「コンサルティングファームである程度の人脈ができたら、民間企業にCEOとして高給で引き抜かれて、その後NGOやNPOなどを経て、最後は国連の職員を目指します」
いかに自分を納得させて生きるか
国連職員といえば、まさに高給取りの象徴で、世界中どこに行くにもファーストクラス。超高級ホテルに滞在して、1年のうち半分が休みというセレブ中のセレブなのだ。
紛争地帯の視察に行っても、朝からホテルのラウンジでワインを飲んでいるという批判もよく聞こえてくる。そんな彼の頭の中には、「派遣」や「日雇い」、「格差」などの文字はひとかけらも存在しない。あるのは、超豪華マンションに住み、高級外車を乗り回す夢のような将来設計だけだ。
もはや「上」から「下」まで、どんなにもがいても抵抗しても、格差は未来永劫、固定されたのだ。あとは悲しいかな、いかに自分を納得させて生きるかだけだろう。
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2009/01/04(日) 00:01:23|
- 労働総合
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