http://www.kahoku.co.jp/shasetsu/2009/01/20090111s01.htm生活保護/もろすぎる「最後の安全網」
【河北新報社 社説 2009/01/11】
生活保護を打ち切られたり、申請を却下されたりした人が県に不服審査の申し立てをし、打ち切り・却下の処分が取り消しになったケースが相次いで表面化している。
東北各県への審査の申し立ては2007年度までの10年間で計82件に上り、このうち16件で打ち切り・却下を取り消す裁決が出た。
保護費の受給を辞退するよう強制された。申請しても窮状を理解しようとしなかった。そんな声が上がっているようだ。
「強制」や「無理解」といった訴えが、一つ一つの審査結果にどう反映されたのかは別にして、今の制度運用の厳しさ、冷たさが浮かび上がってくる。
背景にあるのはもちろん、社会保障費を削り込むという国の数年来の政策原則である。
どこの福祉事務所の、誰が冷淡だったかに目を向けるのではなく、福祉行政の現場で職員がどんな国策圧力にさらされているかを見つめる視点が必要だ。
「最後のセーフティーネット」だったはずなのに、この安全網はもろすぎないか。雇用不安が深まり行く中でそう問い直されている。
厚生労働省によると、生活保護の受給者は114万世帯の158万人(昨年9月現在)。申請までこぎ着けると89%が受給できたが、市町村窓口などに相談に来た人のうち申請できた人は44%だった(06年度)。
国は05年から母子加算、老齢加算の制限や廃止など抑制策を進めている。地方自治体に対しては資産調査の徹底や就労指導の強化を求めた。受給辞退の働き掛けが強まり、相談窓口で申請を断念させる「水際作戦」が広がった要因とされる。
国会は7日の参院本会議で雇用対策緊急決議を採択した。生活保護の弾力的な運用を求める野党案に与党も歩み寄り、生活保護の活用を盛り込んでいる。
決議のその趣旨がどこまで効果的に浸透していくかが、しっかりチェックされなければならない。
「運用弾力化」や「活用」が給付抑制原則の変更を意味していないことは明らかだ。行政現場の判断に濃淡が生じる可能性が大きい。緊急措置とはいえ、担当職員の悩ましさをさらに増大させないためにももっと具体的な指針が要る。
雇用対策としての側面から考えるのであれば、受給している人たちの世帯、年代的な特徴も思い起こしておく必要がある。
65歳以上の高齢者が45%、障害者・傷病者世帯が36%で母子世帯が8%。この3つでほぼ9割になる(07年度、厚労省調査)。働き盛りの世代が突然失職しても、すぐに対応できるようにはしてこなかった表れではないか。
本来なら受給できる状態なのに制度を利用していない人がかなり多い。社会福祉の研究者らはそうみる。欧州では少なくとも50%以上の利用率が日本は20%以下という推計もある。
弾力的な運用で事態は切り開いていけるのか。制度の土台そのものの再構築を目指すべきではないか。議論を深めたい。
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2009/01/12(月) 00:09:44|
- 労働問題社説
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