http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080916/trd0809162217004-n1.htmインドネシア人看護師・来日1カ月 受け入れ病院側に後悔の声も 課題浮き彫りに
【MSN産経新聞 2008.9.16】
真剣なまなざしで日本語の授業に臨むインドネシア人研修生ら=大阪市住吉区のAOTS関西研修センター インドネシアとの経済連携協定により、日本で働く看護師や介護福祉士候補のインドネシア人約200人が来日して1カ月あまりが経過した。慢性的な人手不足にある医療や介護の現場を支える新たなパワーとして期待を集め、日本側の斡旋(あつせん)機関は「外国人労働者に門戸を開く大きな一歩」という。しかし、受け入れた病院側は今になって「甘く見ていた…」と後悔しているところもあるなど課題も浮き彫りになってきている。
■高い意欲
「スーパーには何がありますか?」
「卵とリンゴです」
大阪市住吉区の「関西研修センター」で、看護師候補のインドネシア人たちの日本語研修の風景だ。教師の質問に、頭髪を黒いベール(ヘジャブ)で覆ったインドネシア人女性が答え、続いて他の研修生が覚えたての日本語で復唱した。
センターの研修は合宿形式で半年間続き、月〜土曜の毎日3時間以上、日本語や日本文化を学ぶ。
研修生たちは少しでも早く日本に慣れようと懸命だ。インドネシアで13年の看護師経験を持つピピット・サビトリさん(35)は「予習復習もして授業時間外も勉強しているが、それでもコミュニケーションをとるのは難しい」と言葉の壁に苦労する実情を話す。それでも「設備の整った日本で働けるのは名誉なこと。技術を磨いて、将来は日本とインドネシアをつなぐ架け橋になりたい」と意欲は高い。
■さまざまな環境整備
インドネシア人看護師の受け入れ施設は全国47カ所にのぼるが、研修終了予定の2月に向け病院側の対応はさまざまだ。
受け入れ施設の佐藤病院(大阪府枚方市)では研修中の看護師候補2人と英語の手紙をやりとりし、医療用語などの日本語を教える“通信教育”を行っている。手厚いフォローアップを行う理由を、同病院人事課の佐藤善彦さんは「滞在中3回しか受けられない国家試験に試験に受かってもらうため」と言い切る。そのうえで、「外国にいる不安感を取り除き、長く働いてもらうためのモチベーション作りの目的もある」と一刻も早く病院の“戦力”になってもらうための手段であることを強調した。
また、友愛会病院(大阪市住之江区)は、イスラム教徒の2人の看護師候補に配慮し4種類の食事メニュー中、2種類は豚肉を除くことを決めた。また、1日5回の礼拝のため屋上にスペースを設けることも検討中で、担当者の三谷貞敏さんは「生活習慣以外にも配慮する点は限りなくある」と話す。
■定着率に疑問も
今回の協定では、受け入れ施設側に有形無形の“先行投資”が必要になっている。このためか、募集に手を挙げた後で辞退する病院も少なくなかった。
関西の病院関係者は「思っていた以上に費用がかかる。契約上、飛行機代から下宿費用も負担しなければならない。通訳を雇ったり、試験をパスさせるための手間や時間、人件費を入れても3年で数千万円はくだらない。人材派遣会社に頼んで短期間でも日本人看護師を入れた方がコスト面でもよかったかも」と話す。
西日本の病院関係者は「雇用契約書も日本語、インドネシア語、英語と3種類も用意した。慣れない中、短期間で膨大な書類を作って、資格を取れないまま1〜2年で帰国されたらすべてが水の泡だ」という。
また、インドネシアの看護事情に詳しいNGO関係者は、「彼女たちは必ずしも資格をとりたいとは思っていない」と指摘する。日本で2、3年働いた実績を手に母国に帰ると、より良い条件で雇用されるというのだ。
フィリピン人看護師らの調査をしている神戸大の中園直樹教授は「アジアの国々でも看護師は高い専門性を持つ仕事で日本人が思っている以上に優秀。アメリカやカナダなど英語圏からも募集がある中で、日本が国家試験合格を課す現状はナンセンス。今のままでは制度は定着しない可能性の方が大きいのでは」と話している。
アジアの看護・介護現場の労働事情に詳しい世界人権問題研究センターの安里和晃研究員に、今回の制度の問題点を聞いた。
「一番に挙げたいのは雇用契約が不明瞭な点だ。インドネシア人看護師たちは、来日前に平均的な日本の看護師の給与は20万円くらいと聞いていたという。しかし、まだ日本国内の資格がなく、最初は『看護助手』と同等として雇用されるため、その金額よりも低い。私が聞いた中では11万円という人もいた。
母国での給料は平均で月1〜3万円が相場。10万円でも破格だが、最初に20万円と聞いていたら不満に思うのは当然だ。募集時に雇用条件を示しているはずだが、このように契約段階で最初の条件と違うケースが多い。日本特有のあいまいさがもたらした弊害で、これは2国間の信頼関係にも影響を及ぼす。
職務内容も、床のモップがけ一つでもインドネシア人は看護師の仕事と思わない。契約時に明らかにしないと『インドネシア人だからやらされているのでは…』と、いつの間にか人種問題にすり替わってしまう。台湾では、こういう問題が労働紛争の原因になっている。
また『空気を読む』など、日本ならではの気質は外国人には通用しない。明確なコミュニケーションが職務を遂行の上で求められる。だからマネジメントのあり方も再考する必要がある。
幸い介護施設・病院への赴任までまだ数カ月の猶予がある。問題点を共有化し、対処方法を探るべきだ。厚労省など国側も受け入れ施設に丸投げするのではなく、サポートする姿勢が求められる」
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2008/09/17(水) 00:05:50|
- 介護福祉/看護/医療関連
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