http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080717/165631/?P=1派遣禁止で「日雇い不況」も 引っ越し、イベント運営…中小企業が悲鳴
【日経ビジネスオンライン 2008/07/22】
企業 政治・経済
日雇い派遣 格差是正
労働者派遣法 東京の下町、荒川区で運送業を始めて80年近い老舗企業のサンウェイ。「ハトのマーク」でお馴染みの「引っ越し専門」の協同組合に加盟し、年間2300 件近くの引っ越し業務を請け負っている。全国で210ほどある引っ越し専門の加盟社の中で、常に10位以内に入る。この優良な成績を支えているのが、現場の作業員9人を含む正社員18人と、サンウェイが直接雇用するアルバイト10人、それに人材派遣大手のフルキャストから派遣される1日限りのスポット(日雇い)派遣労働者たちだ。
亡き父の後を継ぎ、30年の長きにわたり同社を引っ張ってきた井上久子社長(77歳)は、連日の「
日雇い派遣、原則禁止へ」という新聞報道を見ては、ため息をつく。
「法人からの引っ越し依頼では、100人を超えるスタッフを臨時で募集することも年に10回はある。それだけの人数を自社で労務管理することなど不可能。このままだと会社を畳むしかない」
日雇いの派遣で来た労働者のうち、直接雇用を希望する者をアルバイトとして採用したり、そこから正社員に採用したりした人も少なくない。しかし、繁忙の波が大きい仕事であるがゆえに、基本的にはスポット派遣に頼らざるを得ないのが実情だ。
■「格差是正」で与野党が動く
7月8日、与党は「
日雇い派遣の原則禁止」などを盛り込んだ提言を舛添要一厚労相(写真右)に提出した
だが、日雇いや短期間派遣などを中心として、人材派遣業界に強烈な逆風が吹きすさんでいる。
業界大手のフルキャストと最大手のグッドウィル(東京都港区)が昨年来、禁止されている港湾・建設現場への派遣や、二重派遣をしたことなどで相次ぎ事業停止命令を受けた。グッドウィル・グループは7月末をメドに
日雇い派遣事業からの撤退を発表している。
自民党と公明党の「新雇用対策に関するプロジェクトチーム」(座長・川崎二郎元厚生労働相)は7月8日、雇用が不安定な
日雇い派遣の原則禁止など、労働者派遣制度見直しのための提言をまとめて、舛添要一厚労相に手渡した。8月下旬にも召集される臨時国会で
労働者派遣法の改正案を提出する方針だ。川崎元厚労相は「
ワーキングプアの温床となる
日雇い派遣を廃止して、正規雇用を促すべきだ」と法改正の必要性を訴える。
与党案では、通訳やアナウンサーなど専門性の高い26業種(下記)を除いて、
日雇い派遣を
全面的に禁止する方針だ。企業グループ内で運営する派遣子会社への規制強化、派遣会社が受け
取るマージン(手数料)の開示なども盛り込んだ。
●例外対象となる26業種
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080717/165631/zu1.jpg
一方、民主党は2カ月以下の労働者派遣契約の禁止など、さらに厳しい改正を提案している。
登録型派遣のビジネスモデルが、国民の格差拡大につながっているとの考えからである。
「格差是正」は今や多くの支持を得られる絶好の政策。衆議員の解散総選挙をにらみ、与野党とも
に
日雇い派遣の禁止を盛り込んだ
労働者派遣法の改正で格差を縮小させ、国民からの支持を高めた
い思惑もある。
そんな中、弱者の声に耳を傾ける者は少ない。サンウェイなどの引っ越し作業における臨時の
スタッフは「軽作業」と見なされ、26業種には含まれない。このため、
日雇い派遣禁止の対象と
なってしまうのだ。
ほかにも、データ集計のためのパソコンの打ち込み作業、クレーム処理のための電話応対係なども
禁止の対象となる。これらの業種に対しては原則として派遣はできなくなり、仕事の紹介業務への
転換を求められる。
従来は派遣元の業者と労働者が雇用契約し、給与の支払いなどは派遣元の業者が行っていたが、
今後は労働者と紹介先企業が契約を結び、企業自身が給与の支払いなどをしなければならない。
そのための人件費や事務コストの増加が予想されるが、「資源高で業績は圧迫されており、
そんな余裕はない」とサンウェイの取締役業務部長の君島秀幸氏は嘆く。
関東を中心に、コンサートや展示会などのイベントスタッフを1日単位で募集するある中堅人材
派遣企業のトップは「多い日には数百人規模の人材を派遣しているが、それをイベント運営会社が
当日に、それも現金で給与の支給などの労務管理ができるとは到底考えにくい」と首をかしげる。
厚生労働省職業安定局の需給調整事業課長の鈴木英二郎氏は「登録型派遣の全面禁止は行き過ぎ」
としながらも、今回の改正について「1999年以前に戻るだけで、派遣会社が労働者派遣事業を
職業紹介事業にシフトしても弊害は起こらない」と言い切る。
製造業や建設業などを除いて、多くの業種に派遣が認められるように法律が改正された99年以前は
、専門性の高い特定の業務以外は派遣が認められなかった。だが、日雇いの需要がある以上、
派遣が禁止されても、派遣会社から紹介された人が相手先企業でアルバイトなどとして雇われれば
日雇いには変わりないはず。それが格差是正につながるのだろうか。
■あえて「日雇い」を選ぶ層も
90年代の不況で企業は人件費圧縮のために派遣社員を多用した。同時に、働き手の側が正社員以外
での新しい働き方を見いだしてきた側面もある。
「正社員になりたくてもなれない」「安定した雇用を保証されたい」という需要がある一方、
「働く時間を自分で選びたい」「趣味の時間を優先させたい」という需要もあるのだ。
埼玉県に住む33歳の男性は、大手の派遣会社に登録し、1日だけのスポット派遣や1週間から1カ月間
の短期派遣で収入を得ている。「カネが貯まれば世界を旅する人生を選んだ。カネがなくなれば
また働けばいい。休みが取れない正社員には魅力を感じない」と自分なりの生き方を貫くために
派遣労働の道を選ぶ。
昨年8月に厚労省が発表した「
日雇い派遣労働者の実態に関する調査」によると、「今後希望する
就業形態」について聞いたところ「現在のままでよい」が45.7%を占め、「正社員」を希望する
29.6%を大きく上回った。
ネットカフェ難民の温床とされる
日雇い派遣だが、厚労省の調査によれば、「住居がなく、寝泊まり
するためにネットカフェなどを利用する」人の割合はわずか0.4%に過ぎなかった。
有効求人倍率が1倍を超えていた好況期ですら、正社員や契約社員の道をあえて選ばなかった人は
少なくない。
日雇い派遣はそんな人の雇用を支えてきたとも言える。
製造業向けのアウトソーシングで中長期の人材派遣を行うユナイテッド・テクノロジー・ホール
ディングス社長で、日本エンジニアリングアウトソーシング協会理事でもある若山陽一氏は
「社会保障が不十分という議論は正しいが、
日雇い派遣の全面禁止という議論は拙速。経済の
実態に即していないのではないか」と釘を刺す。当日に支払うカネの工面ができずに、資金繰りが
ショートしてしまう中小企業が出てくる可能性もある。
選挙対策もあって、永田町でアピール合戦が続く
日雇い派遣の禁止法案。だが、一方では新たな
官製不況を引き起こしかねない。
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2008/07/23(水) 22:59:51|
- 派遣切り/派遣村/非正規問題/パート社員
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