http://www.toyokeizai.net/business/regional_economy/detail/AC/f289628e665da9d0dcb81ac6e0987565/ トヨタの変調が直撃!!一気に凍る名古屋経済 景況感悪化ペースは全国で最悪
【東洋経済オンライン 2008/11/12】
国内最強のモノづくり王国・名古屋経済の失速がいよいよ明白なものになってきた。
日本銀行名古屋支店が発表した東海3県(愛知、岐阜、三重)の9月短観。全産業の業況判断指数がマイナス10と前回6月調査よりも9ポイント悪化した。全国は7ポイント悪化で東海地域の急減速が際立つ。
東海3県の8月の鉱工業生産指数は前月比5・4%減に急落。愛知県の8月の有効求人倍率は1・64倍。倍率は2004年2月から55カ月連続で全国トップだが、これで3カ月連続の前月割れ。「愛知の企業は若年層中心にまだ人が必要」(愛知県経営者協会)との声は残っているが、「人手不足」が各地域で叫ばれる状況は完全に消えた。
バブル崩壊後、愛知万博、中部国際空港開港などのビッグプロジェクトを経て、「日本経済のエンジン役」を一身に担ってきた名古屋。この最強経済地域の内部でいったい何が起きたのか。
名古屋経済にとって最大の衝撃はトヨタ自動車の変調だ。日本最大の貿易拠点である名古屋港の輸出額の4割は輸送用機器。「親戚などをあたれば、必ずトヨタ関連の仕事をしている人が見つかる」(経済団体幹部)とも言われる。名古屋の失速はトヨタを頂点とする自動車産業の失速に置き換えてもいい。
そのトヨタの今期業績は9期ぶりの大幅減益の見込み。国内生産の6割を輸出に振り向けており、北米市場の不振が大きな打撃となっている。
トヨタの雇用面も、ほんの少し前の「超人手不足」からは様変わりした。正社員は削減していないが、期間従業員を半年間で2割強削減した。俗にいう「期間工」は、最長3年弱を期限として工場で働く、短期の従業員。前期末の8800人から、この9月末には6800人まで圧縮された。ピーク時の05年央からは、約4割縮小したことになる。
「契約期間の途中で切ったのではなく、新車投入時期など需要変動の要因だってある。正社員への登用も毎年進めてきた」とトヨタ幹部は話す。ただ、期間従業員も新規採用は6月末を最後に行っておらず、当面は人員が増える見込みは薄い。
トヨタグループでは、デンソーや豊田自動織機、トヨタ紡織などの部品会社も、期間従業員や派遣社員を減らし始めた。
よくなるのが最初なら悪くなるのも最初
三菱UFJリサーチ&コンサルティングのエコノミスト・内田俊宏氏は「東海地域の景気悪化は今後、もっと深くなる」と予測する。
サービスなど製造業以外にもさまざまな産業が集積する首都圏や関西と違って、東海の産業構造は製造業の一本足打法である。トヨタを代表格とする大企業の下に4次、5次まで下請け企業が連なる製造業の集積は、事業拡大局面において、強烈なエネルギーと高い効率性となって、威力を発揮する。
だが、歯車が逆回転を始めるときはそれがあだとなる。製造業を補う脇役が見当たらないためだ。「竜の尻尾が東京なら、頭は東海。最初に上がるが、下がるのも最初」(内田氏)なのだという。
「トヨタ関連は来年秋まで厳しい状況が続く。残業時間を減らして対応するという」「自動車、工作機械の1次下請けなどから、バブル崩壊のときよりも先行きが不透明との声」「この1〜2カ月で中規模な設備投資案件が数件白紙になった」
東海地域の地銀・大垣共立銀行には、各支店からの悲痛な叫びが寄せられるようになってきた。「アンケートなどをざっと見ると、自動車関連の話が多い。この地域では末端まで自動車産業が広がっている。自動車が落ちると経営者の心理も一気に冷え込む」(共立総合研究所主席研究員・江口忍氏)。
名古屋で賃金・人事コンサルタントを行う北見式賃金研究所にも、中小企業からの切実な相談が相次ぐ。内容は「自動車部品の仕事が減っており、赤字になる前に経費を何とか減らしたい」など。北見昌朗所長は「経営者には1万円単位でも経費を削りたいというニーズが強い。これから、そういう人たちを対象にした人件費見直しセミナーを開催していく」と話す。
大企業から中小企業の隅々にまで蔓延する今回の景気悪化。これに追い打ちをかけているのが、ドルやユーロに対する急激な円高だ。日本ガイシ、ブラザー工業、イビデン……。東海地域では、トヨタグループに続く有力企業も海外輸出で事業を拡大してきた。
そうした企業が製品需要の縮小と円高という突風にさらされ、業績急悪化の危機に陥っている。イビデンは北米自動車向け製品が不振。「需要は年内は回復しないと見ていたが、それどころではなくなった」と今期業績予想を減額修正したが、その後の急激な円高はさらに利益を奪い取ることになるかもしれない。
そもそも明治以降、繊維産業の一大生産地として発展してきたのが、名古屋を中心とした東海地域である。繊維大国の時代から現在までほぼ一貫して「円高は悪、という考え方が名古屋周辺には完全に染みついている」(江口氏)。
名古屋にとって、円高は輸出採算悪化という直接的な被害を引き起こすだけでなく、景況感を一気に凍らせる悪材料なのである。
東京や大阪より早く財布のひもを締めた?
名古屋の消費も好調な製造業に支えられてきた。00年開業のJR東海高島屋。名古屋駅に直結したこの百貨店は、駅周辺の消費を一挙に拡大させる立役者となった。
岐阜や三重など工作機械や家電工場の集積地からやってくる買い物客にとって、名古屋駅周辺のアクセスは格段にいい。これら地域の製造業の業績拡大で潤った人たちが名古屋駅周辺の消費を牽引した。「名駅(めいえき)の百貨店好調は製造業効果」(内田氏)だったのである。
名古屋一の繁華街・栄地域の各百貨店に比べ、JR東海高島屋の売上高はまだ底堅いが、「今後はかなり影響が出てくるのではないか」(業界関係者)とみられている。
もちろん、全国的に拡大する不動産不況とも無縁ではない。
大垣共立銀行には、「栄地域ビルのテナント空室が目立つ」「三重ではショッピングモールの空き店舗が埋まらない」「分譲マンション、分譲地の売れ残りが目立つ」などの報告が上がるようになってきた。
名古屋の地元では「人気のあったビルでもレンタル会議室などにして、空室をごまかしている。名古屋駅周辺でも今後、空室が埋まらない状況が顕在化するのではないか」と警戒感が強まっている。
総崩れのようにみえる名古屋経済。では、「最強」の看板は完全に降ろされたのだろうか。しぶとさを裏付ける材料もいくつかある。
名古屋企業の代名詞は「堅実」である。日銀をはじめとした各機関の景況感調査で全国レベルより悪化しているのは堅実さの裏返し、とも考えられる。「名古屋の経営者は他の地域以上に悪く考える傾向があり、投資などもすぐに見直しにかかる」(帝国データバンク名古屋支店情報部・龍信行部長)。
堅実さは個人消費にも反映されている。全国百貨店の地区別売上高では、9月まで東京と大阪がそろって7カ月連続前年割れだったのに対し、名古屋は10カ月連続の前年割れ。東京や大阪より一足早く、財布のひもを締めていたのだ。9月の8・7%減という東京、大阪以上の落ち込み幅についても「ドラゴンズの優勝セールがあると思って、買い控えていた」という説があるほどだ。
名古屋は「貸し渋り」や「貸し剥がし」が他の地域よりは起きにくいと言われる。国内を代表する製造業の集積地であり、金融機関も乱立している。しかし、地元企業の経営手法の特徴は「借金嫌い」。そうした企業相手に各金融機関は「名古屋金利」と言われる特別低金利で、しのぎを削ってきた歴史がある。金融機関にとって貸し渋りは競争からの「脱落」に直結しかねない。
名古屋の経済はいち早く、景気後退局面に陥った。現在のところはどこも悲観一色だが、この地域の特性から見ると、おそらく浮かび上がるのも早い――。結局のところ、名古屋に「最強」の看板が再び掲げられる確率は、依然として高いのかもしれない。
(週刊東洋経済)
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- 2008/11/14(金) 00:01:05|
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