http://mainichi.jp/select/biz/news/20081118ddm013100127000c.html生活危機:08世界不況 自動車工場、突然の計画縮小 正社員の夢、目前砕かれ
【毎日新聞 2008/11/18】
米国発の金融危機は、自動車メーカーなど日本の輸出産業を激しく揺さぶっている。全国で最も元気といわれた愛知県の経済にもかげりが見え始めた。製造大手からは、好業績を下支えした働き手が振り落とされている。失業した1人の男性を追った。【遠藤和行】
◇「期間従業員は歯車か」
11月上旬の愛知県豊田市。1カ月前に失業した真人さん(31)=仮名=は、なじんだ作業服をスーツに替え、就職活動に奔走していた。「午前中に企業の合同就職説明会に参加したんですが、どうも新卒者が目当てのようで、感触は良くないですね」。既に面接を受けた1社からは、「ご希望に沿えず」と不採用の連絡。新卒でも「内定取り消し」が出たとニュースで知ると、不安を募らせた。
愛知県の9月の有効求人倍率は1・54で、前月に比べ全国最大の0・10ポイントの下げとなった。55カ月連続の単独首位が途切れ、群馬県との同率首位になった。
真人さんは10月上旬まで、大手自動車メーカーのグループ会社の工場で働いていた。4月上旬から半年契約の期間従業員。自動車の部品を管理し、取り付け担当者に運ぶ仕事だ。昼勤と夜勤を1週間交代。手取りは17万円程度だが、寮は無料だった。仕事がきつくても頑張れたのは正社員への登用試験を受けられるからだ。入社時に「半年ごとにある。ぜひ受けて」と勧められた。勤続1年で正社員になった人もおり、「1年働いたら挑戦する」と決めていた。7月には契約更新希望調査の用紙が配られ、「希望」と即答した。
だが、ほどなく米国経済の不振のため、自動車メーカーが販売・生産計画を引き下げる。そのしわ寄せは、グループ会社で働く派遣社員や期間従業員にも及んだ。
8月下旬、昼勤を終えると、社員食堂に呼ばれた。9、10月で契約満了となる同僚数人が集まっていた。やがて人事担当者が、1対1になって説明した。「原油高のうえサブプライムローン問題もあり、米国で車が売れない」。契約を更新しないとの通告だった。「やはり期間従業員は『歯車』か」。会社の事情は分かっても、納得はできなかった。
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真人さんはバブル経済崩壊後の94年、群馬県の高校を卒業した。いったん上京したが、家業を手伝うため20歳の時に帰郷。数年後、長野県で営業の契約社員などとして勤めた。その間に父が病死した。車のローンなどで数百万円の借金があった。「返済して出直したい」と寮付きの自動車製造の仕事を探した。求人誌で選んだ愛知県の派遣会社に登録した。
04年から今春まで派遣社員として、乗用車のシート作りに携わった。昨年には借金を完済し、「次は正社員になって生活を安定させたい」と望むようになった。夢に近づいているつもりだったが、淡い期待に終わった。
契約満了日まで1カ月を切った9月、米国の証券大手、リーマン・ブラザーズが破綻(はたん)するなど、世界経済は一気に混迷を深めた。「職探しを急がないと」と、ハローワークやネットの求職情報サイトで面接を申し込んだ。知り合いにも履歴書を渡して紹介を頼んだ。
失業後、派遣時代の知人が豊田市内に借りる6畳一間のアパートに身を寄せた。光熱費込みで2万円を払う。夜は台所で寝袋に入る。食事はスーパーで半額になった弁当や即席めんを買ったりして、極力出費を抑える。貯金は15万円しかない。つなぎとなる失業給付金を申請したが、受給できるのは1月まで。一時的に東京で暮らす母を頼ろうかとも考えた。
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自動車産業の不振は、地域経済にも影を落としていた。豊田市内の自転車店経営の男性(59)は「夏まで1日1台売れていたのが、期間従業員らが減って、最近は2日に1台だ」と嘆いた。
中心市街地にある11商店街の代表、吉村達也さんは「夏までは、金曜夜の駅前の飲み屋街は繁盛していたが、最近はにぎわいがうせてきた」と心配顔だ。「自動車会社がくしゃみをすると商店街は風邪か、肺炎になる。特効薬があればいいんだが」と話した。
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先週末、真人さんから知らせが届いた。知人の紹介で愛知県内のビル管理会社に面接に行き、即日、内定をもらったという。年明けから正社員として働く。
約10社に申し込み、面接にこぎ着けた2社目。この間、ハローワークを通じては面接の機会すら得られなかった。同時期に失業した同僚の一人は愛知県での就職をあきらめ、九州の実家に帰った。
「未経験の仕事ですが、素直にうれしい。私は幸運な方です」と語る真人さん。消えた正社員の夢が思わぬ形で実現した。居候生活にもようやく区切りをつけられそうだ。
◇条件満たせば失業給付金も
期間従業員などが契約満了時に更新できない場合、収入が途絶えて経済的に困窮することもある。次の仕事を探しているのに見つからない「失業中」なら一定条件を満たすことで国から失業給付金を受けられる。
厚生労働省雇用保険課によると、資格は、雇用保険の被保険者で辞めた日からさかのぼって2年間に、11日以上勤めた月が12カ月以上ある人だ。
本人が所定の書類を最寄りのハローワークに出す必要がある。辞めた際に勤務先から渡される「離職票」は必須だ。もし渡されておらず、何らかの事情で勤務先に連絡できない場合は、ハローワークに依頼すると、代わりに勤務先に請求してくれる。給付を受けられる期間は辞めた翌日から1年間限り。受給額や受給期間はケースによって異なるためハローワークに相談する。
テーマ:社会問題 - ジャンル:ニュース
- 2008/11/19(水) 00:03:14|
- 派遣切り/派遣村/非正規問題/パート社員
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